沈下修正工事の工法について
2022/05/25
5月もそろそろ終わりに近づいてきましたが深夜の補強工事はまだまだ続いています。
仮囲い養生の中での施工なので、少し蒸し暑くなってきました。
やはり写真映えしないので今回は前回の続編
建物の傾きの状況によって選択する工法は変わってきますがそのあたりについての各工法の解説です。
弊社では主にアンダーピニング工法(鋼管杭打ち)、耐圧板工法、土台揚げ工法の3つの工法によって傾いた建物を治す沈下修正工事を行っております。
各工法の選定については(https://k-tcn.com/blog/detail/20220513081446/)こちらをご覧ください。
アンダーピニング工法
建物の傾きがまだ進行している。
建物の支持地盤が深い。
擁壁等の造成地。
地中内障害物(解体物、伐採した樹木)等が埋まっている場合。
杭打ちヶ所の障害物撤去作業 撤去した障害物(廃材)
特に障害物が埋まっている可能性や支持層を考慮せずに耐圧板工法やアンダーピニングと称した
この様な石杭を施工すると数年後にほぼ再沈下します。コンクリートブロックの転圧による摩擦で反力を得る工法になるので支持層までは圧入で出来ず、耐圧板工法とアンダーピニングの中間程度の工法になります。
また鋼管杭は溶接して鋼管を一体化して強度を確保するのに対して、このブロックはただ積み重ねて沈めるだけなので、地中内で横方向の土圧が掛かった場合に弱くなり水平が維持できずに圧縮した力が加わるとブロックが破損し杭として建物が支えられないのが欠点になります。
石杭1カ所分の使用量
ちなみに上記写真の現場では石杭は1m~1.5m程度の深度数しかなく再沈下を起こし、鋼管杭で施工して8m程度の支持層まで圧入いたしました。
耐圧板工法
建物の傾きが収束している。
建物の支持地盤が比較的浅い。
地盤は良い地域だが地震等の外的要因で傾いた場合。
ジャッキセット 鋼管受け方
土台揚げ工法
建物の傾きが収束している。
地盤は良い地域だが地震等の外的要因で傾いた場合。
水廻りや玄関が絡んでいない部分的な傾き。
ジャッキアップ前 ジャッキアップ後
各工法とも基本は上記の様な条件を考慮して工法を決めていくのですが
様々な建物状況や条件がありますからさらに絞り込んでいきます。
それはジャッキアップ後の補修工事も工法によって変わってくるからです。
アンダーピニング工法・耐圧板工法
基礎ごと建物を持ち上げるのでジャッキアップ時に縁切り解体を行った土間やポーチ、切り離した給排水設備配管の繋ぎ込み復旧工事が必要な補修工事となり、ジャッキアップ後の状況により室内のクロス補修や建具調整が発生します。トータルの補修工事は既存の外構との絡み次第ですが、通常あまり大きな金額にはなりません。
ジャッキアップ後 土間復旧前 土間左官後
無筋基礎の場合に土台揚げしか選択視が無いと思われるかもしれませんが、再建築不可な建物や土台揚げに不向きな条件の場合は繊維シート補強工事を行う事で基礎ごとジャッキアップが可能です。
床下でのアラミド補強 外部での鋼管杭状況
土台揚げ
基礎と土台を切り離して土台より上のジャッキアップを行うので、切り離した給排水設備配管の繋ぎ込み復旧工事が必要な補修工事となり、ジャッキアップ後の状況により室内のクロス補修や建具調整まではアンダーピニング工法や耐圧板工法と同じですが、大きく違ってくるのは玄関ポーチと浴室廻りの追加工事が発生する点です。
玄関はドア枠を基礎から斫り出してジャッキアップとなるので、ドア枠と土間ポーチの間にジャッキアップで出来た隙間ができてしまい土間コンクリートで埋めてからのタイル貼りとなります。
浴室は埋め込みの場合、ジャッキアップ量が少ない場合でもひび割れによるタイル補修が必要となり、ジャッキアップ量が少し大きくなると埋め込み風呂の解体撤去が必要となり、ジャッキアップ後にユニットバス設置工事が必要となりますのでジャッキアップ後の補修工事は大きな金額になります。
浴室解体後 玄関ポーチジャッキ台斫り
この様に工法により補修工事が違ってきますから築年数や今後のリフォーム計画を伺い、修正工事と補修工事の総合計金額までを考慮して工法を選定しますので現地調査はお任せください。
来週の夜間工事は他業者と被ってしまい作業効率が宜しくないので、新規お問い合わせを頂いた茨城県のお宅で土台揚げを施工してきます。